老犬がうんちを漏らすようになったら|後始末の負担を減らす整え方
この記事でわかること
排泄の失敗を叱らないほうがよい理由と、飼い主さんの気持ちの置きどころ
寝床まわりの防水対策と「洗えるものを重ねる」整え方
部分洗いと蒸しタオルを使い分けた、体に負担の少ない清拭の考え方
おしりまわりの毛のケアと、においを溜めない洗濯・換気の回し方
かかりつけの動物病院に相談したほうがよいサイン
まず、叱らないことから始める
長く一緒に暮らしてきた犬が、ある日、寝床でうんちを漏らしてしまう。驚きと戸惑いで、つい声が出てしまうことがあるかもしれません。
けれど、年齢を重ねた犬にとって、排泄をこらえる力や「トイレまで移動する」という一連の動作は、少しずつ難しくなっていきます。本人が怠けているわけでも、わざとしているわけでもありません。むしろ、できていたことができなくなったことに、犬自身が戸惑っている場合もあります。
叱られると、犬は「排泄そのもの」を悪いことだと学習してしまうことがあります。すると、隠れた場所でしようとしたり、我慢して体に負担をかけたり、飼い主さんの前で排泄すること自体をためらうようになったり。結果として、後始末がもっと大変になる方向へ進んでしまいます。
叱る代わりにできること
場面 | 控えたい対応 | 代わりにできること |
漏らしているのを見つけた | 大きな声を出す、名前を呼んで注意する | 静かに近づき、いつもと同じ声で声をかける |
犬が気にして動き回る | 無理に押さえつける | 体を汚さない位置に誘導し、落ち着いてから拭く |
後始末の最中 | ため息、舌打ち | 手早く、淡々と済ませる |
片付け終わったあと | 無言で立ち去る | 軽く撫でる、水を勧めるなど普段通りに戻す |
「淡々と」が難しいときもあります。疲れているとき、夜中に何度も続いたとき、きれいにしたばかりのときは、誰でも感情が動きます。そういう日があっても自分を責めなくて大丈夫です。大事なのは、毎回完璧に振る舞うことではなく、片付けの手間そのものを減らして、感情が揺れにくい仕組みを作っておくことです。
寝床まわりを「重ねて」整える
便失禁への備えで最も効果が出やすいのが、寝床の構造を見直すことです。考え方はシンプルで、上から順に剥がしていけるように重ねること。全部を洗い直すのではなく、汚れた一枚だけを交換できる状態を目指します。
重ね敷きの基本構成
層 | 役割 | 選ぶときの目安 |
1. 一番下(床側) | 床材を守る | 防水シート、レジャーシート、使わないビニールクロスなど |
2. 下敷き | クッション性と滑り止め | 低反発マット、ジョイントマット |
3. 防水層 | 下まで染みさせない | 防水シーツ、おねしょシーツ |
4. 吸収層 | 水分を受け止める | ペットシーツ、介護用吸水パッド |
5. 肌あたり層 | 体に触れる面 | 薄手のタオル、洗えるマット、ガーゼケット |
この5層のうち、汚れるのはたいてい4と5だけです。交換は2枚で済み、1〜3はそのまま残せます。夜中に起きて対応するときも、暗がりで迷わず手が動くようになります。
肌あたり層は「同じものを複数枚」
タオルやマットは、同じ製品を4〜6枚そろえておくと管理が楽になります。サイズも質感も同じなので、交換時に迷いません。洗濯のローテーションも組みやすくなります。
おしゃれなベッドカバーを1枚だけ使うより、地味でも洗い替えがある方が、この時期は圧倒的に助かります。
寝床の周囲も視野に入れる
犬が寝床から半分だけ出た状態で漏らしたり、立ち上がろうとして体の向きが変わったりすることもあります。寝床の外側にも、ひとまわり大きく防水シートやペットシーツを広げておくと、カーペットやフローリングへの染み込みを防げます。
フローリングに直接染みると、目地から水分が入って変色やにおいの原因になります。床を守ることは、住環境と飼い主さんの気持ちの両方を守ることにつながります。
だれも教えてくれない、「全身を洗わない」清拭の組み立て方
便を漏らしてしまったとき、反射的に「シャンプーしなければ」と思う方は多いと思います。けれど、シニア期の犬にとって全身シャンプーは、想像以上に体力を使う出来事です。
立ち続ける、濡れる、乾かす。この一連の流れは、若い頃なら何でもなかったものが、足腰が弱ってきた犬には大きな負担になります。しかも便失禁は一度きりとは限りません。そのたびに全身を洗っていたら、犬も飼い主さんも続きません。
ここで役に立つのが、汚れの程度に応じて手段を使い分けるという発想です。
汚れの程度と対応の目安
汚れの状態 | 対応 | 所要時間の感覚 |
毛の表面に少し付いた | ウェットティッシュ・濡らしたコットンで拭き取る | 1〜2分 |
毛の奥まで入った・乾きかけ | 蒸しタオルで温めてからふやかして拭く | 5分程度 |
おしりから後ろ足まで広がった | 部分洗い(シャワーで下半身だけ) | 10分程度 |
体の広範囲・体全体 | 部分洗いを数か所に分けて行う | 休憩をはさみながら |
蒸しタオルの作り方と使い方
タオルを水で濡らして固く絞り、電子レンジで温めます。取り出すときは熱くなっているので、広げて手の甲で温度を確かめてから使ってください。熱すぎる状態で皮膚に当てることは控えてください。
乾いた便は、こすって落とそうとすると皮膚を傷めます。蒸しタオルを汚れた部分にしばらく当てて、ふやかしてから拭き取る。この「待つ」ひと手間で、力を入れずに落とせます。温かさで犬の体が緩み、嫌がりにくくなるという副次的な効果もあります。
部分洗いの手順の考え方
下半身だけを洗う場合、犬を浴室に連れていくのではなく、洗面器とぬるま湯を使って寝床の近くで済ませる方法もあります。移動が少ないほど、犬の負担は減ります。
洗ったあとは、水分を残さないことが大切です。濡れたままだと体が冷え、皮膚トラブルにもつながります。タオルで押さえるように水分を取り、必要なら低温のドライヤーを離して当てます。熱風を近距離で当て続けることは控えてください。
皮膚が赤くなっている、ただれている、犬が触られるのをひどく嫌がるといった様子があれば、自己判断でケアを続けず、かかりつけの動物病院にご相談ください。
おしりまわりの毛のケア
便が毛に絡むかどうかは、おしりまわりの毛の長さで大きく変わります。ここを整えておくだけで、毎回の後始末の手間が目に見えて減ります。
整えておきたい部位
部位 | 整える理由 |
肛門のまわり | 便が直接絡むのを防ぐ |
しっぽの付け根の裏側 | 座ったときに便が付きやすい |
後ろ足の内側 | 伝い落ちた汚れが溜まる |
足の裏の毛 | 踏んで広げてしまうのを防ぐ |
毛を短くしておくと、拭き取りだけで済む場面が増えます。シャンプーの回数が減り、乾かす時間も短くなります。
ただし、犬が動く場所に刃物を近づける作業には危険が伴います。皮膚はたるんでいて、毛と一緒に引っ張られやすい部位です。不安がある場合は、トリミングサロンや、かかりつけの動物病院でのご相談を検討してください。
洋服やマナーパンツという選択
おなかや下半身を覆える服や、吸水パッドを使うタイプのパンツを使う方法もあります。寝床を汚しにくくなる一方で、蒸れやすくなる、締め付けが負担になる、犬が気にして動き回るといった面もあります。
一日中着せ続けるのではなく、「夜間だけ」「来客があるときだけ」のように時間を区切る使い方が、犬の負担を抑えやすい方法です。装着した状態で長時間放置せず、こまめに中の状態を確認してください。
においを溜めない住まいの回し方
便失禁の悩みは、後始末だけではありません。家ににおいが残ることが、じわじわと飼い主さんの気持ちをすり減らします。
においは「発生源を残さない」「空気を動かす」「布を溜めない」の3つで大きく変わります。
においへの対応と考え方
対象 | やること | ポイント |
床・壁 | 水拭きのあと、ペット用消臭剤 | 染み込む前に拭く |
布製品 | その日のうちに洗濯へ回す | 汚れた布を室内に置かない |
ゴミ | 密閉できる袋に入れ、蓋付きの容器へ | 室内のゴミ箱に溜めない |
空気 | 1日に数回、短時間でも窓を対角に開ける | 風の通り道を作る |
犬の体 | 汚れたらその都度、部分的に拭く | においの元は体にも残る |
犬が口にしてしまう可能性のある場所では、使用する洗剤や消臭剤の成分表示を確認し、ペットがいる環境で使える製品を選んでください。
洗濯の回し方を「仕組み」にする
汚れ物が出るたびに洗濯機を回すのは現実的ではありません。おすすめは、下洗い用のバケツを一つ決めておくことです。
汚れた布は固形物を落としてバケツへ
水かぬるま湯に浸けておく
1日の決まった時間(朝または夜)にまとめて洗濯機へ
乾いたものは畳まずカゴにまとめ、寝床のそばに置く
畳まない、というのが地味に効きます。夜中に交換するときは、カゴから一枚引き抜くだけで済みます。
洗い替えが足りないと感じたら、枚数を増やすことを検討してください。買い足しの出費より、夜中に替えるものがない焦りの方が、ずっと負担になります。
かかりつけの動物病院に相談したほうがよいサイン
年齢による変化として受け止められる部分がある一方で、体からのサインとして見逃したくない変化もあります。以下のような様子があれば、様子を見続けずに、かかりつけの動物病院にご相談ください。
気づいたこと | 相談の目安 |
下痢が続いている | 食欲や元気の有無とあわせて早めに |
便に血が混じる・黒っぽい | 早めに |
急に漏らすようになった | 今までできていたことが短期間で変わったとき |
排泄時に鳴く、強くいきむ | 痛みのサインの可能性 |
何日も出ていない | 水分摂取の様子とあわせて |
おしりのまわりが赤い・ただれている | 清拭を続ける前に |
食欲が落ちている、水を飲まない | 排泄の変化と重なるとき |
受診の際は、いつから・どのくらいの頻度で・便の状態はどうだったかをメモしておくと、診察の助けになります。スマートフォンで便の写真を撮っておくのも有効です。言葉で説明しにくい色や形を、そのまま伝えられます。
ここでは原因や対処について踏み込みません。体の中で何が起きているかの判断は、診察した獣医師にしかできないためです。
飼い主さんの消耗にも、目を向けてください
排泄の介助は、終わりの見えにくいケアです。夜中に何度も起きる日が続くと、睡眠が削られます。外出のたびに「帰ったら汚れているかもしれない」と考えるようになります。友人との約束を断る回数が増えていきます。
そして多くの飼い主さんが、そのことに罪悪感を持ちます。「大変だと思ってしまった自分」を責めてしまう。
けれど、疲れを感じることと、犬を大切に思うことは、まったく矛盾しません。むしろ、手を抜かずに向き合ってきたからこそ疲れるのです。
消耗を減らすための小さな工夫
工夫 | 効果 |
後始付けセットを1か所にまとめる | 夜中に探さなくて済む |
寝床のそばに手袋とゴミ袋を常備 | 動線が短くなる |
「きれいにする基準」を下げる日を作る | 全部を完璧にしない |
誰かに一度でも話す | 抱え込みが軽くなる |
ケアを分担できる家族がいれば、曜日や時間帯で役割を決めておくと、お互いの負担が偏りにくくなります。一人で担っている場合は、外部の手を借りるという選択肢も、検討していい段階かもしれません。
ご家庭で受けられるケアという選択肢
合同会社しっぽは、北九州市小倉北区を拠点に、老犬・シニア犬・療養中のペットのための訪問型アニマルケアを行っています。施設にお預かりするのではなく、スタッフがご自宅に伺い、住み慣れた場所で過ごす犬のそばでケアを行います。
排泄の受け止めや体の清拭、寝床まわりの整え、おしりまわりの汚れのケアなど、日々の介助の一部をお手伝いできます。「今日は自分が倒れそうだ」という日に休息の時間を作るレスパイトケア、通院時の病院帯同、終末期に寄り添う訪問ホスピス・ターミナルケアもご用意しています。お別れのあとのエンゼルケア、そしてグリーフケア(ペットロスサポート・オンライン可)まで、長い時間を一緒に歩けるように整えています。
対応エリアは北九州市内全域(門司・小倉北・小倉南・若松・八幡東・八幡西・戸畑の7区)です。動物取扱業登録済(保管・第16014号)で、担当は愛玩動物救命士・愛玩動物看護師・愛玩動物介護士のいずれかが務めます。なお、医療行為は行いません。体の異変については、かかりつけの動物病院へのご相談をお願いしています。また、施設を持たないため、お預かりやペットホテルは行っておりません。
ご利用は要予約で、24時間の対応体制をとっています。原則として当日のお申し込みは承っておりませんが、緊急性が高いと判断した場合は可能な限り対応いたします。
ご相談・カウンセリングは無料です。 料金についてはサービス内容やご家庭の状況によって異なりますので、まずはお話をお聞かせください。お見積りをご案内したうえで、ご納得いただけた場合のみお進みいただきます(代金は先払い、ご入金の確認後にサービスの準備に入ります)。詳しくはお問い合わせください。
うんちを漏らすようになったことは、犬が弱ったという事実であると同時に、これまで一緒に生きてきた時間の長さの証でもあります。その時間を、できるだけ穏やかに続けていけるように。一人で抱え込まずにいられる方法を、一緒に考えさせてください。


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