老犬が抱っこを嫌がるようになったとき|痛みの可能性と触り方の見直し
この記事でわかること
「抱っこを嫌がる」という反応に、どんな種類があるのか
どこを触ったときに反応が出るかを観察し、記録に残す方法
無理に持ち上げないための代替手段(支える位置の変更、スロープ、移動の工夫)
動物病院に相談するかどうかを判断するときの目安
家族が「嫌われた」と感じてしまったときの考え方
「抱っこを嫌がる」は、ひとつの行動ではない
昨日まで腕を広げれば寄ってきた子が、ある日から身をよじるようになる。シニア期に入った犬によく見られる変化です。
ただ、ひとくちに「嫌がる」といっても、中身はまったく違います。飼い主さんが最初にすることは、無理に抱っこを成功させることではなく、どのタイプの拒否なのかを見分けることです。
反応のしかた | 考えられる背景の例 |
持ち上げる瞬間に鳴く・キャンと言う | その動作で体のどこかに負担がかかっている可能性 |
手が近づいた時点で後ずさりする | 過去に痛かった経験を覚えている/予測して避けている |
抱っこ中にずっと体を硬くしている | 姿勢が不安定で、落ちる不安を感じている可能性 |
振り向いて手を口で止めようとする | 「そこはやめて」という意思表示 |
触られた部分をあとから舐める・気にする | その部位に違和感がある可能性 |
寝ている時に触ると驚いて反応する | 聴力や視力の低下で、接近に気づいていない |
同じ「嫌がる」でも、痛みが理由の場合と、不安や感覚の変化が理由の場合では、家族側の対応がまったく変わります。まずは決めつけずに観察するところから始めてみてください。
だれも教えてくれない、「どこで鳴いたか」ではなく「どの動作で鳴いたか」を見る
多くの飼い主さんは「背中を触ったら鳴いた」と記憶します。ところが実際には、背中そのものではなく、背中を触るために体を傾けさせた姿勢が原因だった、ということが少なくありません。
シニア期の体は、一か所の不調がほかの部位の使い方を変えます。後ろ足をかばえば前足と首に負担が寄り、首をかばえば体をねじって振り向くようになります。つまり、鳴いた瞬間に触れていた場所と、つらさの出どころが同じとは限らないのです。
だからこそ見るべきは「場所」ではなく「動作」です。
観察する動作 | 見るポイント |
持ち上げる | 床から離れる瞬間か、腕に収まった後か、どちらで反応するか |
下ろす | 足が着地する瞬間にためらいや鳴きがあるか |
抱き直す | 持ち替えの途中で体を硬くするか |
抱っこのまま歩く | 揺れに対して落ち着かない様子になるか |
抱っこを解いた後 | すぐ歩き出すか、しばらく動かないか |
「持ち上げる瞬間だけ鳴いて、腕の中では落ち着いている」のと、「抱っこ中ずっと固まっている」のとでは、伝えるべき情報として価値がまったく違います。動物病院に相談するときも、場所より動作のほうが手がかりになりやすい情報です。
家族によって反応が違うとき
お父さんが抱くと鳴くのに、お母さんが抱くと鳴かない。これもよくある話です。嫌われているわけではなく、抱き方の角度や支える位置、持ち上げるスピードが違うだけ、というケースがあります。
反応が少ない人の抱き方を、ほかの家族が真似る。これだけで家の中の負担が減ることがあります。誰の抱き方が一番落ち着くのかを、家族で共有しておくと役に立ちます。
記録のとり方——メモは短くていい
毎日こまやかに書こうとすると続きません。続く記録は、短くて、形式が決まっているものです。
項目 | 書き方の例 |
日時 | 10/3 朝 |
場面 | ソファから下ろすとき |
反応 | キャンと一声、その後3歩ほど歩き方が小さい |
触れていた位置 | 胸の下と後ろ足の付け根 |
その後 | 5分ほどで普段どおり |
スマートフォンのメモアプリに1日1〜2行で十分です。可能であれば、嫌がる瞬間を無理に再現せず、普段の歩き方や立ち上がり方の動画を撮っておくと、診察のときに言葉より伝わることがあります。
記録が1〜2週間たまると、「夕方に多い」「寒い日に多い」「散歩の後だけ」といった傾向が見えてくることがあります。これは飼い主さんにしか集められない情報です。
動物病院に相談するかどうかの目安
痛みの原因や治療については、ここでは触れません。判断は診察を受けた上で行うものだからです。ただ、「受診するほどだろうか」と迷ったときの整理には、次のような視点が役立ちます。
こんな様子がある | 考え方 |
持ち上げるたびに鳴く状態が続いている | かかりつけの動物病院にご相談ください |
以前は平気だった動作を避けるようになった | 変化の時期と内容をメモして、相談を検討 |
立ち上がりや段差で、以前よりためらう | 抱っこ以外の場面にも出ている変化として相談を |
食欲・排泄・睡眠にも変化がある | 早めにかかりつけの動物病院にご相談ください |
特定の部位を気にして舐め続ける | 自己判断で処置せず、相談を |
反応が一度きりで、その後まったく出ない | 記録を残しながら様子を見る選択もある |
迷ったときは、電話で状況を伝えて相談だけしてみる、という方法もあります。「連れて行くかどうか」から考えると腰が重くなりますが、「聞いてみる」なら始めやすいはずです。
なお、嫌がるからといって市販のものを与えたり、自己流のマッサージで強く押したりすることは控えてください。原因がわからない段階で体に働きかけると、かえって負担になることがあります。
無理に持ち上げない——代替手段を先に用意する
痛みの有無を確かめている間も、生活は続きます。トイレに行く、車に乗る、ソファから下りる。抱っこが必要な場面はなくなりません。
そこで考えたいのが、「抱っこの回数そのものを減らす」ことです。
段差をなくす・ゆるやかにする
場面 | 工夫の例 |
ソファやベッドへの上り下り | 傾斜のゆるやかなスロープを設置する |
玄関の上がりかまち | 踏み台を段階的に置く/滑らない素材を敷く |
車の乗り降り | スロープやステップを使う |
床の移動 | 滑りにくいマットを敷いて、足元の不安を減らす |

抱っこの回数を減らすため、家の中の段差をゆるやかにする工夫の例。
スロープは傾斜が急だと使ってくれないことがあります。最初は低い場所から、表面に滑りにくい素材があるものを選び、上り下りのたびに付き添ってあげると慣れやすくなります。
「持ち上げる」から「支える」へ
どうしても移動が必要なときも、全身を抱え上げる以外の方法があります。
方法 | どんなときに |
大きめのタオルを胴の下に通して支える | 後ろ足に力が入りにくいとき |
平たいクッションやボードに乗せたまま移動する | 短い距離の移動、姿勢を変えたくないとき |
体の横に寄り添って、歩行を支える | まだ自力で歩けるが、ふらつきがあるとき |
介助用のハーネスを使う | 日常的に支えが必要なとき |
共通するのは、体をねじらせないことです。関節や背中に不安がある子にとって、持ち上げる動作そのものより、持ち上げる過程で体がねじれることのほうがつらい場合があります。
どうしても抱っこするときの見直し
手を近づける前に声をかける(聴力が落ちている場合は、視界に入ってから触れる)
いきなり持ち上げず、まず体に手を添えて数秒待つ
胸とお尻の両方を支え、体が水平に近い状態を保つ
持ち上げる速度をゆっくりにする
下ろすときは、足が床に着いたのを確認してから手を離す

体をねじらせず水平を保つ、抱き上げから下ろすまでの手順。
抱っこを嫌がる子ほど、「抱っこは痛い」という記憶が積み重なっていきます。一度でも落ち着いて終われた経験があると、次が少し楽になることがあります。急がないことが、結果的に近道になります。
「嫌われた」と感じたときに
長く一緒にいた子に避けられるのは、理屈ではわかっていても応えます。「私の抱き方が悪かったのでは」「もっと早く気づいていれば」と自分を責める方は少なくありません。
けれど、犬が体をよじるのは拒絶ではなく、言葉を持たない子の精一杯の説明です。「ここがつらい」と伝えてくれている。そう受け取れると、観察の目が変わってきます。
気持ち | 置き換えてみると |
嫌われた | 情報をくれている |
抱っこできなくなった | 別の触れ方を探す時期になった |
気づくのが遅かった | 今日から記録を始められる |
スキンシップの形も変わっていきます。抱き上げなくても、横に座って背中にそっと手を置く、名前を呼んで目を合わせる、寝ている横で過ごす。抱っこだけが愛情表現ではありません。
介護期に入ってからの抱っこと移動
拒否反応が続き、日常的に支えが必要になってくると、家族の体にも負担が蓄積します。腰を痛めてしまう飼い主さんもいます。
移動の回数を減らすために、水飲み場やトイレを犬の居場所の近くに移す
日中過ごす場所を一か所にまとめ、長距離の移動をなくす
夜間の移動が必要な場合は、足元に明かりを用意して、焦らず動ける環境をつくる
支える人が一人に偏らないよう、家族で担当を分ける
小さな工夫の積み重ねですが、1日に何度も繰り返す動作だからこそ、効果は大きくなります。
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ご家庭で受けられるケアという選択肢
ここまで、観察と記録、代替手段についてお伝えしてきました。それでも、「この抱き方で合っているのか」「家の中のどこを変えればいいのか」は、実際に見てもらわないとわかりにくいものです。
合同会社しっぽは、北九州市内全域(門司・小倉北・小倉南・若松・八幡東・八幡西・戸畑の7区)で、老犬・シニア犬・療養中のペットを対象とした訪問型のアニマルケアを行っています。施設は持たず、ご家庭にうかがう形です。担当するのは愛玩動物救命士・愛玩動物看護師・愛玩動物介護士のいずれかの資格を持つ者で、動物取扱業の登録(保管・第16014号)を受けています。
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訪問ホスピス・ターミナルケア:最期の時間をご自宅で過ごすための支援
レスパイトケア:介護を続けるご家族が休息をとるための時間づくり
病院帯同:受診にうかがい、移動や院内での付き添いを支援
エンゼルケア/グリーフケア:お見送りの後のサポート(オンラインでのご相談も可能)
医療行為は行いません。体の異変や痛みの原因については、かかりつけの動物病院にご相談いただくことが前提です。また、預かりやペットホテルは行っていません(免許は返上済みです)。
24時間対応・要予約です。原則として当日のお申し込みはお受けしていませんが、緊急性が高いと判断した場合は、可能な限り対応いたします。
相談・カウンセリングは無料です。 料金が発生するのは、実際のサービスをご利用いただく場合のみで、代金は先払い(ご入金の確認後にサービスの準備を進めます)となります。訪問の内容や費用については、ご家庭の状況によって変わりますので、詳しくはお問い合わせください。
「抱っこを嫌がるようになった」という小さな変化も、話していただいて構いません。まずはお話を聞かせてください。





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