老犬のおしっこの回数が増えたとき|記録のとり方と暮らしの整え方
この記事でわかること
おしっこの回数が増えたと感じたときに、家庭で「何を」「どう」記録すればいいか
動物病院に伝わりやすいメモの書き方と、持っていくとよいもの
トイレまでの動線・床・明かりなど、住まい側を変えて失敗を減らす工夫
防水シーツ・おむつ・トイレの位置を、犬の状態に合わせて使い分ける考え方
粗相を叱らないことが、なぜ介護の後半に効いてくるのか
「回数が増えた」と感じた時点で、もう情報は始まっている
シニア期に入った犬の排泄の変化は、ある日突然やってくるように見えて、実は少し前から小さなサインが出ていることが多いものです。
夜中に起きてうろうろするようになった
トイレに行ったのに、またすぐ行く
トイレの手前で間に合わなくなった
一回あたりの量が少ない気がする
水の器が空になるのが早い
こうした「気がする」は、飼い主さんだけが持っている情報です。動物病院の診察室では、体重や触診はその場でわかっても、「家で一日に何回、どのタイミングで出ていたか」は飼い主さんの口からしか伝わりません。
まず大切なのは、原因を自分で突き止めようとしないことです。排泄の変化には体の不調が関わっていることもあれば、年齢による変化や、水を飲む量・気温・運動量の影響が重なっていることもあります。判断はかかりつけの動物病院にお任せして、ご家庭では「できるだけ正確な記録を残す」ことに力を向けてください。それが結果的に、いちばん役に立ちます。
記録すべきは6つ|何を見て、どう書くか
闇雲にメモを取ると続きません。見るポイントを絞ります。
項目 | 具体的に書くこと | 書き方の例 |
回数 | 一日に何回出たか。正の字でよい | 「10/5 正正 →10回」 |
量 | 多い・ふつう・少ない の3段階で十分 | 「朝は少なめ、夜は多め」 |
色 | 薄い/いつも通り/濃い/赤みがある | 「昼の分、いつもより薄い」 |
におい | 強い/弱い/いつもと違う | 「におわない日が続く」 |
飲水量 | 器に入れた量と、残った量 | 「朝500入れて夜50残り」 |
失敗 | 場所・時間帯・そのときの様子 | 「23時、廊下。寝起きすぐ」 |
ポイントは、数値の基準を気にしないことです。「何回なら多い」という線引きを自分で引く必要はありません。大事なのは「その子のいつも」からどう動いたか。だから、気になり始めた日から書き始めれば十分です。
色とにおいは「見た瞬間」にしかわからない
尿の色は、時間が経つと変わります。シーツに染みたものを夜にまとめて確認しても、朝の状態とは違って見えることがあります。気になったときは、その場でスマホで撮るのがいちばん確実です。
撮るときのコツ:
白いペットシーツの上、または白いトイレの上で撮る(色が比較しやすい)
フラッシュは使わず、同じ場所・同じ明るさで撮る
撮影日時が残るので、メモと照らし合わせやすい
におい(「アンモニア臭が強い」「ほとんどにおわない」など)は写真に残りません。気づいたその場で一言だけメモしてください。
飲水量は「引き算」で足りる
正確にml単位で測ろうとすると続きません。計量カップで器に入れ、次に足すときに残りを測って引く。これだけで傾向はつかめます。
ただし、ここで注意があります。「おしっこが増えたから水を減らそう」は控えてください。 粗相を減らしたい気持ちはよくわかりますが、水分を自分の判断で制限するのは、犬の体にとって負担になりうる行為です。水はいつでも飲める状態にしておき、「飲む量が多い/少ない」という事実のほうを記録して、かかりつけの動物病院に伝えてください。
だれも教えてくれない、「失敗の地図」のつくり方
記録というと時間軸で考えがちですが、老犬の排泄で本当に効くのは空間の記録です。わたしたちが訪問先で最初にお聞きするのも、「どこで失敗しましたか」です。
間取りに印をつけるだけ
紙に、ざっくりでいいので家の間取りを描きます。正確でなくてかまいません。そこに、粗相があった場所に印をつけていきます。日付を小さく添えると、なおいいです。
1〜2週間続けると、印は散らばらず、かたまって現れます。そして、そのかたまりには意味があります。
印が集まる場所 | 読み取れること | 試せる工夫 |
寝床のすぐそば | 立ち上がってすぐ間に合わない | 寝床の隣にトイレを増設する |
廊下の途中 | トイレまでの距離が長すぎる | 中継地点にシーツを敷く |
段差・敷居の手前 | 越えるのに時間がかかっている | スロープ化/敷居をまたがない動線に |
フローリング上 | 滑って踏ん張れない | 滑り止めマットを連続して敷く |
トイレの手前30cm | 方向転換や姿勢を作るのに手間取る | トイレを広く・ふちを低く |
ドアの前 | 閉まっていて入れなかった | ドアストッパーで開けておく |
つまり、多くの「失敗」はしつけの問題ではなく、動線の問題だということです。犬はトイレに行こうとしている。でも間に合っていない。ここを分けて見られるようになると、対応が一気に具体的になります。
時間帯も一緒に書いておく
同じ場所でも、昼に失敗するのと深夜に失敗するのとでは、理由が違うことがあります。暗くて見えていないのかもしれませんし、寝起きで足元が定まらないのかもしれません。「場所+時間」の2つが揃うと、打てる手が見えてきます。
住まいを変える|トイレまでの距離を短くする
まずは「近づける」
老犬の介護でいちばん費用対効果が高いのは、トイレを増やすことです。既存のトイレを動かすと混乱する子もいるので、元の場所はそのままに、寝床の近くにもう一つ追加するやり方が取り入れやすいでしょう。
最初は使ってくれないこともあります。その場合でも、しばらく置いておくと「近いほう」を選ぶようになることがあります。
床は「点」ではなく「線」で
滑り止めマットを一枚だけ置いても、その周りで滑ってしまえば意味が薄れます。寝床からトイレまでを、途切れさせずにつなぐイメージで敷いてください。
床材 | 向いている場面 | 気をつける点 |
タイルカーペット | 汚れた一枚だけ洗える/交換できる | めくれて段差にならないよう固定 |
コルクマット | 衝撃をやわらげる | 爪が引っかかる場合がある |
滑り止め付きラグ | 広い面を一気にカバー | 洗い替えを用意しておく |
防水マット+布カバー | 汚れが床に染みない | 表面が滑らないものを選ぶ |
夜の明かり
夜間の粗相が多いなら、足元灯を検討してみてください。人感センサー付きのものを、寝床からトイレまでの経路に点々と置きます。目や耳が衰えてきた子にとって、明るさの手がかりは思いのほか大きいものです。
ただし、顔の高さで直接光が当たる位置は避け、床を照らす向きに置くほうが落ち着きます。
防水シーツ・おむつ・マナーベルトの使い分け
「おむつにしたほうがいいですか」というご相談はよくいただきます。答えは、その子の状態と、ご家族の暮らし方によって変わります。一律におむつが正解ではありません。
方法 | 向いている状態 | 注意したいこと |
ワイドペットシーツを広く敷く | 自力で歩ける。トイレの位置がぼやけてきた | 交換の手間は増える |
寝床全面に防水シーツ+タオル | 寝たまま出てしまうことがある | タオルをこまめに替える |
マナーベルト・マナーパンツ | 少量が漏れる程度 | 長時間の装着は控える |
おむつ | 立てない/移動が難しい | 蒸れ・皮膚への刺激に注意 |
トイレを広く低くする | 姿勢を作るのに時間がかかる | ふちにつまずかない高さに |
おむつを使うなら、肌を最優先に
おむつは便利ですが、「濡れたまま長く当たっている」状態は皮膚にとって負担になります。使う場合は、こまめに外して肌の状態を見てあげてください。赤み・かぶれ・いつもと違う様子に気づいたら、自己判断でクリームなどを塗らず、かかりつけの動物病院にご相談ください。
また、おむつにすると粗相は減りますが、記録は取りづらくなります。回数が見えなくなるためです。導入する前の数日〜1週間、シーツのまま記録を取っておくと、後から比較できて役立ちます。
粗相を叱らない|これは犬のためであり、ご家族のためでもある
床を拭きながら、つい「あーあ」と声が出る。片付けの最中にため息が出る。責める気はなくても、犬はその空気を受け取ります。
叱られた経験が重なると、犬は「排泄そのもの」を隠そうとすることがあります。家具の裏や押し入れの奥でするようになると、発見が遅れ、記録も取れなくなり、皮膚トラブルにも気づきにくくなります。結果として、困るのはご家族のほうです。
「片付けやすい家」が、叱らない家をつくる
精神論ではなく、仕組みで解決するのが現実的です。
拭き取り用のペーパーとウェットシートを、失敗の多い場所の近くに置いておく
洗い替えのタオル・カバーを多めに用意する(一枚しかないと焦りが生まれます)
床に直接染みない構造にしておく(防水マットを一枚かませる)
ゴミ袋をその場に常備する
拭くまでに10秒で取りかかれる状態なら、ため息は減ります。叱らない工夫は、心構えよりも動線の設計です。
ご家族自身の消耗にも目を向けてください
夜中に何度も起こされ、洗濯物が増え、外出もためらうようになる。シニア犬の排泄介護は、静かに、しかし確実にご家族の体力を削っていきます。
「まだ頑張れる」と思っているうちに、休む手立てを用意しておくこと。これは甘えではなく、介護を長く続けるための準備です。
こんなときは、早めにかかりつけの動物病院へ
以下は診断ではなく、ご家庭で気づける観察の目安です。あてはまるときは、記録を持ってかかりつけの動物病院にご相談ください。
気づいたこと | 伝えるとよい情報 |
急に回数や量が変わった | いつから/変わる前の状態 |
何度も構えるのに出ていない様子 | 回数と、そのときの姿勢 |
色がいつもと違う・赤みがある | 撮影した写真 |
においが明らかに変わった | いつから/どんなにおいか |
水を飲む量が大きく変わった | 入れた量と残った量のメモ |
排泄のときに声を出す・嫌がる | 動画があればなお良い |
食欲・元気さが一緒に落ちている | 食事量と、散歩の様子 |
病院に持っていくもの
記録のメモ(スマホのメモアプリでも、紙でも)
尿の写真(撮れていれば)
失敗の地図(間取りに印をつけたもの)
排泄時の動画(姿勢が気になる場合)
言葉で説明しようとすると「たぶん増えました」で終わってしまいがちですが、メモが一枚あるだけで、診察で伝えられる情報の密度がまるで変わります。
記録を続けるための、ゆるいルール
完璧を目指すと、三日でやめてしまいます。続けるためのコツを挙げます。
工夫 | 内容 |
置き場所を決める | トイレの近くにメモとペンを常備する |
書く量を減らす | 正の字+一言だけ。文章にしない |
写真に頼る | 気になったら撮るだけ。整理は後で |
家族で分担する | 同じメモに、誰が書いてもいい形に |
期間を区切る | 「まず2週間」と決めると心理的に軽い |
書けない日があっても、やめないでください。空欄のある記録でも、何もないよりずっと役に立ちます。
ご家庭で受けられるケアという選択肢
排泄の変化は、老犬との暮らしの中でもとりわけご家族の負担が大きくなるところです。記録を取りたくても、仕事と介護の往復で手が回らない。夜に何度も起きていて、自分の体力が続かない。トイレの位置を変えたいけれど、何をどう動かせばいいかわからない——そういうご相談を、わたしたちはよくお受けします。
合同会社しっぽは、北九州市小倉北区を拠点に、老犬・シニア犬・療養中のペットのための訪問型アニマルケアを行っています。施設は持たず、ご自宅にうかがう形です。住み慣れた家から動かさずにすむことは、足腰の弱ったシニア犬にとって負担の少ない選択肢のひとつだと考えています。
お手伝いできること:
訪問介護・介助 — 排泄のお世話、体位の調整、見守りなど、暮らしの中のケア
レスパイトケア — ご家族が眠る、出かける、休むための時間を確保する支援
病院帯同 — 記録の整理も含め、かかりつけの動物病院への受診にご一緒します
訪問ホスピス・ターミナルケア
エンゼルケア/グリーフケア(ペットロスのご相談はオンラインでも承ります)
対応エリアは北九州市内全域(門司・小倉北・小倉南・若松・八幡東・八幡西・戸畑の7区)です。動物取扱業登録済(保管・第16014号)で、担当は愛玩動物救命士・愛玩動物看護師・愛玩動物介護士のいずれかがうかがいます。医療行為は行いませんので、体の異変についてはかかりつけの動物病院へおつなぎする形になります。預かりやペットホテルは行っておりません。
ご相談・カウンセリングは無料です。 料金やご利用の流れについては、お子さんの状態とご希望をうかがったうえでご案内しています。代金は先払い(入金確認後にサービスの準備に入ります)という形をとっています。24時間対応・要予約で、原則として当日のお申し込みは承っておりませんが、緊急性が高いと判断した場合には可能な限り対応いたします。詳しくはお問い合わせください。
「これくらいで相談していいのかな」と迷う段階こそ、いちばん打てる手が多い時期です。記録のとり方、トイレの配置、夜の過ごし方——どんな入り口からでもかまいません。まずはお話を聞かせてください。


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