最期が近い犬の呼吸が気になるとき|そばでできることと、相談先の整え方
この記事でわかること
呼吸の様子を見るときに、どこを静かに観察しておくとよいか
体勢・寝床・室温・音など、そばにいる人が整えられること
かかりつけの動物病院や夜間救急への連絡を、慌てないために事前に準備しておく方法
付き添う家族自身の呼吸と休息を守るという視点
立ち会えなかったときの気持ちの置き場所
夜中に、犬の呼吸の音で目が覚める。胸やお腹の動きが大きくなっている気がする。口を少し開けている。前は静かに眠っていたのに。
そういうとき、頭の中に浮かぶのは「苦しいのだろうか」という一言だと思います。そして、それを確かめる方法を、だれも教えてくれないまま夜が過ぎていく。
この記事では、医療的な判断には立ち入らず、「そばにいる人が、静かにできること」だけを書きます。体の異変そのものについては、かかりつけの動物病院にご相談ください。ここに書くのは、その相談をしやすくするための準備と、相談と相談のあいだの時間の過ごし方です。
呼吸の「様子」を、言葉にしておく
呼吸が気になるとき、多くの方が「苦しそうです」と病院に伝えます。それは正しい伝え方です。ただ、そこにもう少し具体的な言葉が添わると、獣医師が状況を把握しやすくなります。
数えたり測ったりすることが目的ではありません。あなたが見たものを、あとで思い出せる形にしておく、というだけのことです。
見ておくとよい5つの点
観察する点 | メモの例 |
姿勢 | 伏せている/首を伸ばして座っている/横になれず起き上がろうとする |
口 | 閉じている/少し開けている/開けたまま舌が出ている |
動く場所 | 胸が動いている/お腹が大きく動く/体全体が揺れる |
間隔・リズム | 一定/速くなったり遅くなったり/ときどき止まるように見える |
音 | 静か/ゼーゼー/グーグー/ヒューという音がまじる |
「いつから」と「何をしていたとき」も添える
気づいたのは今日の夕方か、数日前からか
寝ているときだけか、起きて動いたあとか
食事や水を飲んだあとに変わるか
横向きにすると変わるか、伏せのほうが落ち着くか
このメモは、スマートフォンのメモアプリに日付とともに書き足していくだけでかまいません。短い動画を一本撮っておくのも、言葉にしきれない部分を伝える助けになります。撮影のために体を動かしたり、起こしたりすることは控えてください。寝ている姿のまま、離れたところから撮れば十分です。
体勢を楽にするための、そばでできる工夫
呼吸が気になるとき、犬は自分にとって楽な姿勢を探します。その「探している動き」をさまたげないことが、まず第一です。
姿勢を固定しないという考え方
良い姿勢をとらせてあげたい、と思うのは自然なことです。けれど、人が決めた姿勢に体を置き直すよりも、犬自身が選んだ向きのまま、その姿勢を支えるほうが楽なことがあります。
場面 | 控えたいこと | かわりにできること |
首を伸ばして座っている | 無理に横に寝かせる | 胸の下や脇にタオルを差し込み、その姿勢を支える |
横になっているが体が傾く | 体をまっすぐに直す | 背中側にクッションを沿わせ、ずり落ちないようにする |
自分で向きを変えようとする | 手で押さえる | 滑らないよう、敷物の下にマットを入れて足場を作る |
頭が下がって苦しそう | 頭を持ち上げ続ける | 折りたたんだタオルで頭の下に段差をつくる |
寝床を「薄く、広く」
厚いクッションは沈み込み、体を起こしにくくさせることがあります。薄めのマットを広く敷き、そのうえで部分的にタオルを足して高さを調整するほうが、動きたいときに動けます。
床ずれが気になる部位の圧を分散したい、体位を変えたい、といった具体的な方法は、体の状態によって向き不向きがあります。かかりつけの動物病院や、ご家庭に伺うケアの担当者に、その子を見たうえで相談していただくのが確実です。
空気と音と、光を整える
呼吸が気になるとき、部屋の環境は、そばにいる人がもっとも手を入れやすい部分です。
室温と湿度
暑すぎると呼吸が速くなり、寒すぎると体が縮こまります。人が「少し涼しいくらい」と感じる程度を目安に、エアコンの風が直接体に当たらない位置に寝床を置きます。
風向きは、犬の上を通り過ぎるように
床に近い場所は温度が下がりやすいため、足元だけ毛布を一枚
加湿器は、口が開いて乾きやすいときに空気をやわらげる助けになります
暖房器具を体のすぐ近くに置くことは控えてください
音と人の気配
静かにしてあげたい、と思うあまり、家族全員が息を詰めてしまうことがあります。それよりも、いつもの家の音のほうが落ち着くことがあります。
整えたいもの | 考え方 |
テレビ・音楽 | 消すより、音量を下げていつも通りに。急に無音になると不安がることも |
人の声 | ひそひそ話より、落ち着いた普通の声で名前を呼ぶ |
照明 | 真っ暗にせず、足元灯くらいの明かりを残す |
来客 | 大人数で囲まないほうが、呼吸は落ち着きやすい |
におい | 強い芳香剤や香りの強い掃除用品は控える |
触れ方
手を置くとしたら、胸やお腹ではなく、背中や腰のあたりに、重みをかけずに添えるくらいで。呼吸に合わせて上下する胸を押さえてしまわないように気をつけます。撫でることが落ち着きにつながる子もいますし、触られたくない時間がある子もいます。尾や耳、まぶたの動きを見て、嫌がる様子があれば手を離し、ただ近くに座っていてください。
だれも教えてくれない、「夜になってから調べる」をやめる準備
呼吸のことで慌てる夜のつらさは、呼吸そのものだけでなく、「どこに連絡すればいいのかわからない」という部分から来ていることが少なくありません。
これは、まだ落ち着いている昼のうちに、紙一枚で減らせます。
一枚の紙を、冷蔵庫に貼る
スマートフォンの中ではなく、紙に書いて見える場所に貼ることをおすすめします。動揺しているとき、画面をスクロールして探す作業はうまくいきません。家族の誰が最初に気づいても同じ紙を見られる、という点も大きいです。
書いておく項目 | 補足 |
かかりつけ病院の電話番号 | 診療時間、休診日も一緒に |
夜間・休日の連絡方法 | 留守電か、転送か、別の案内先か。事前に確認しておく |
夜間救急に対応する病院 | 受付時間、電話の必要有無、場所 |
そこまでの移動手段 | 誰が運転するか、動物を乗せられるタクシー会社の番号 |
持病・服用しているものの名前 | 伝えるために控えておく(内容の判断はしない) |
体重と年齢 | 電話口で聞かれることが多い |
家族の連絡先 | 誰に先に知らせるか、順番も決めておく |
移動用のキャリー・毛布の置き場所 | 探さずに取り出せる場所へ |
昼のうちに、かかりつけに一度聞いておく
「夜間に呼吸の様子が変わったときは、どう連絡すればいいですか」。この一文を、次の通院のときに聞いておくだけで、夜の選択肢がはっきりします。
病院によって、夜間の対応方針はさまざまです。電話がつながる体制があるところ、留守番電話で翌朝の対応になるところ、提携先の救急病院を案内しているところ。これは良し悪しではなく、それぞれの体制です。だからこそ、「うちのかかりつけはどうなのか」を、落ち着いているうちに確かめておく価値があります。
「連れて行くかどうか」を、先に家族で話しておく
移動そのものが体に負担になる段階もあります。だからこそ、どういう様子のときは家で様子を見て朝を待つのか、どういうときは夜間でも動くのか——その線引きの考え方を、かかりつけの獣医師に一度たずねておく。そして家族のあいだで共有しておく。
夜中に家族で意見が割れることほど、つらいものはありません。前もって話しておけば、その場では「決めたとおりにしよう」で済みます。判断の中身は獣医師の領分ですが、判断のための「話し合いを済ませておく」ことは、今日できることです。
付き添う人の呼吸も、守ってください
ここが、いちばん見落とされます。
呼吸が気になり出すと、眠れなくなります。少し眠っても、音で起きる。日中も気が抜けない。食事が簡単なものになる。そうして数日が過ぎると、判断力も、やさしい声も、だんだん出てこなくなります。
家族のための、小さな仕組み
困りごと | 試せること |
眠れない | 二時間だけでも交代制にする。同じ部屋の別の布団で休む |
目を離すのが怖い | 見守りカメラを置き、隣の部屋で横になる |
一人で抱えている | 遠方の家族にも状況を共有する。見るだけでも役割になる |
仕事を休めない | 日中だけ、だれかに付き添いを頼む選択肢を考えておく |
何もできていない気がする | 水を替えた、タオルを変えた、名前を呼んだ——書き出してみる |
付き添うというのは、起きていることではありません。そばにいられる状態を保つことです。そのためには、あなたが眠る時間も、ケアの一部です。
立ち会えなかったとしても
最期の瞬間に、たまたま席を外していた。買い物に出ていた。仕事だった。少しだけ眠ってしまった。
そのことで、ご自身を責める方にたくさんお会いしてきました。けれど、犬が覚えているのは一瞬ではなく、一緒に過ごしたすべての時間です。毎朝の散歩、こぼした水を拭いた手、名前を呼んだ声。最期の数分だけが特別な重さを持つわけではありません。
静かな場所で、ひとりで息を引きとる子もいます。それは置いていかれたのではなく、ただそうなった、というだけのことです。
あなたが眠った時間も、席を外した時間も、その子のそばで暮らした年月の中にあります。どうか、そこまで含めて見てあげてください。
ご家庭で受けられるケアという選択肢
ここまで読んでくださった方の中には、「わかってはいても、ひとりでは手が回らない」という方もいらっしゃると思います。
合同会社しっぽは、北九州市で老犬・シニア犬・療養中のペットのための訪問型アニマルケアを行っています。施設は持たず、ご自宅に伺う形です。慣れた家の、いつもの寝床のまま過ごしていただけます。
行っていること
サービス | 内容 |
訪問介護・介助 | ご自宅での日常のケアのお手伝い |
訪問ホスピス・ターミナルケア | 最期の時間に向けた、ご家庭での付き添い |
レスパイトケア | 付き添うご家族が休む時間をつくるための支援 |
病院帯同 | 通院に同行します |
エンゼルケア | お別れのあとのお体のお世話 |
グリーフケア | ペットロスのご相談。オンラインでも対応します |
対応エリアは北九州市内全域(門司・小倉北・小倉南・若松・八幡東・八幡西・戸畑の7区)。動物取扱業登録済(保管・第16014号)で、担当は愛玩動物救命士・愛玩動物看護師・愛玩動物介護士のいずれかが務めます。
医療行為は行いません。お体の状態についてはかかりつけの動物病院へおつなぎするかたちになります。また、預かりやペットホテルは行っておりません(免許を返上済みです)。
ご相談について
相談・カウンセリングは無料です。「どんなことを頼めるのかわからない」という段階でも、お話をお聞かせください。
24時間対応・要予約です。原則として当日のお申し込みはお受けしていませんが、緊急性が高いと判断した場合は可能な限り対応いたします。代金は先払い(入金確認後にサービスの準備に入ります)となります。具体的な料金やご利用の流れについては、状況をお伺いしたうえでご案内しますので、詳しくはお問い合わせください。
呼吸の音が気になる夜を、ひとりで数えなくてもいい方法があります。まずは、お話を聞かせていただくところから。


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