老犬が耳をかく・頭をしきりに振るとき|家で見ておきたいことと受診の目安
この記事でわかること
老犬が耳をかく・頭を振るときに、家庭で見ておきたい観察ポイント(におい・汚れ・左右差・嫌がり方)
「いつもと違う」を言葉にして、かかりつけの動物病院に伝えるためのメモのまとめ方
早めに受診を考えたほうがよいサイン(ふらつき・首の傾きなど)
家庭でやらないほうがよいこと(綿棒を奥まで入れる、市販薬の自己判断での使用など)
シニア期の耳のトラブルが、生活のしづらさとつながりやすい理由
耳をかく・頭を振るは「耳だけの話」とは限らない
老犬が後ろ足で耳のあたりを掻く、座ったまま頭をブルブルッと振る、床や家具に顔の横をこすりつける。どれも犬にとってはよくある動作で、一度や二度なら「かゆかったのかな」で終わります。
気にかけたいのは、回数と時間帯と左右差です。
以前は一日に数えるほどだったのに、気づくたびにやっている
夜中や明け方に多い
同じ側ばかり掻く、同じ側に頭を振る
こうした「いつもと違う」が出てきたとき、耳の中そのものが気になっているのか、顔や首まわりの違和感なのか、あるいはバランス感覚の問題なのか、見た目だけでは区別がつきません。体の異変の判断は動物病院の領域です。
わたしたち訪問アニマルケアの立場からお伝えできるのは、病院に行くまでのあいだ、ご家庭で何を見て、何をメモしておくと診察がスムーズになるかという部分です。この記事はそこに軸を置いています。
シニア期は「我慢しているように見える」ことがある
若い犬なら激しく掻いて飼い主さんが気づきやすいのに対し、年齢を重ねた犬は動作そのものが小さくなります。後ろ足が上がりにくい、首をひねるのがつらい、という身体的な事情もあります。
結果として、
掻きたいのに掻けず、ただ頭を小刻みに揺らす
床に顔をこすりつけるだけで終わる
耳のあたりを触られると、なんとなく体を引く
といった控えめなサインに置き換わることがあります。「前ほど掻かなくなったから治った」と考えるより、動作の形が変わっただけではないかという目線を一度持ってみてください。
家で見ておきたい観察ポイント
受診の前に、次の項目をざっと見ておくと、獣医師に伝えられる情報がぐっと増えます。無理に押さえつけず、愛犬が落ち着いているタイミングで、短時間で終わらせてください。
観察する場所 | 見ておきたいこと | メモの例 |
におい | 近づいたときに今までと違うにおいがするか | 「3日前から右耳だけ甘酸っぱいにおい」 |
耳の入り口 | 汚れの色・量、濡れているか乾いているか | 「茶色い汚れが入り口に付く」 |
耳の縁・外側 | 赤み、脱毛、かさつき、掻き傷 | 「耳の縁に傷、血がにじんだ」 |
左右差 | 片側だけか、両側か | 「左ばかり掻く」 |
触れたときの反応 | 嫌がり方の強さと変化 | 「以前は触れたのに今は顔を背ける」 |
頭の位置 | まっすぐか、どちらかに傾いているか | 「少し右に傾いて見える」 |
歩き方 | ふらつき、同じ方向へ寄る、つまずき | 「廊下で右の壁に寄る」 |
耳以外 | 顔まわりの掻き方、体のかゆみ、食欲、睡眠 | 「首も掻く」「夜に寝つけない」 |
においは「変化」で見る
耳のにおいは犬によって個性があります。大事なのは強さそのものより、その子のいつもと比べて変わったかどうかです。
抱き上げたときにふと気づいた、顔を近づけなくても感じるようになった——こうした感覚的な変化も、立派な情報です。「言葉にしづらいけれど、今までと違う気がする」で構いませんので、そのまま獣医師に伝えてください。
汚れは「無理に取らない」のが前提
入り口付近に汚れが見えても、それを取り除くことがこの記事の目的ではありません。むしろ、受診前に拭き取ってしまうと、本来見てもらえたはずの状態が分かりにくくなることがあります。
気になる場合は、拭く前にスマートフォンで写真を撮っておくと役に立ちます。耳の内側は暗くて写りにくいので、照明のある場所で、耳を軽く起こして一枚。嫌がるようならそこで中止してください。
左右差は、意外と見落とされる
飼い主さんの印象では「両耳とも掻いている」でも、記録を取ると片側に偏っていることがあります。数日でいいので、気づいたときに「右」「左」とだけメモしてみてください。
片側だけに集中しているのか、左右まんべんなくなのかは、受診時に役立つ情報のひとつです。
触ったときの嫌がり方を、段階で見る
「嫌がる」とひと言でいっても、程度にはかなり幅があります。シニア犬は反応が穏やかになることも多いため、細かい段階で見ておくと変化に気づきやすくなります。

嫌がり方を段階で見ると、変化に気づきやすくなります。嫌がったら引きます。
段階 | 様子 | 見かたの目安 |
変化なし | 今までどおり触らせる | 平常の基準として覚えておく |
わずかな回避 | 顔をわずかに引く、目をそらす | 記録しておく |
はっきり回避 | 体ごと向きを変える、立ち去る | 触る範囲を控える |
強い拒否 | 唸る、歯を見せる、手を払う | その日は触らず受診を検討 |
触れていないのに反応 | 手が近づいただけで避ける | 受診を検討 |
ここで大切なのは、嫌がったら引くということです。痛みや不快感がある場所を押さえられる経験は、愛犬にとって負担になりますし、「触られること自体が怖い」という記憶として残りかねません。
長い目で見れば、日々のケアを続けるためにも、その日は引いたほうが得策です。普段の耳のお手入れや、嫌がる子との向き合い方については、耳掃除をテーマにした記事をあわせてご覧ください。
だれも教えてくれない、「頭を振る音」と「振り終わったあと」の読み方
耳のトラブルを疑うとき、多くの方は耳の中をのぞこうとします。でも老犬の場合、のぞかなくても拾える情報のほうが、実は扱いやすいことがあります。
1|音で記録する
頭を振る動作は音を伴います。耳が立っている犬ならパタパタ、垂れ耳ならバサッ、首輪や迷子札があればチャリンと鳴ります。
この音は、別の部屋にいても聞こえます。つまり、ずっと見ていなくても回数を数えられるということです。
「今日は夕方に3回聞こえた」「夜中に何度も目が覚めるほど鳴っていた」——これだけでも、頻度の変化を追う記録になります。夜間の様子が気になるなら、スマートフォンの録音機能を一晩回しておくのもひとつの方法です。朝に早送りで聞けば、音のする時間帯がつかめます。
2|振り終わったあとの3秒を見る
もうひとつ、見逃されがちなのが頭を振った直後の数秒間です。

頭を振った直後の数秒で、かゆみ以外の変化が見えることがあります。
単なるかゆみであれば、振ったあとはすぐ元の姿勢に戻り、何事もなかったように歩き出します。ところが、
振り終わったあと数秒そのままの姿勢で止まる
頭がわずかに傾いたまま戻らない
振った直後に体勢を崩す、よろける
振るのをためらうような、ゆっくりした動きになる
といった様子が見られるときは、かゆみ以外の要素が混ざっている可能性を考えたほうがよい場面です。これはバランスに関わる変化のサインとも重なるため、早めにかかりつけの動物病院にご相談ください。
3|「掻く姿勢」が崩れていないか
後ろ足で耳を掻くには、三本足で立ってバランスを取る必要があります。シニア犬にとっては、これ自体がなかなかの運動です。
掻こうとして尻もちをつく
掻き始めるとすぐ座り込む
掻く途中で止めて、代わりに床にこすりつける
こうした変化は、耳の問題だけでなく後ろ足の力や関節の状態とも関わります。「耳をかく」という一つの行動の中に、複数の情報が入っているわけです。動画を数秒撮っておくと、診察のときに言葉以上のことが伝わります。
受診を急ぎたいサイン
次のような様子が見られる場合は、様子を見るより先に、かかりつけの動物病院にご相談ください。
様子 | 考えかた |
頭が片側に傾いたままになっている | 早めの受診を |
歩くとふらつく、同じ方向に回る・寄る | 早めの受診を |
目が細かく揺れているように見える | 早めの受診を |
耳を触ろうとすると強く痛がる、鳴く | 早めの受診を |
耳から液状のものが出ている、出血がある | 早めの受診を |
耳が腫れている、厚みが増したように見える | 早めの受診を |
食欲が落ちた、水を飲む量が変わった | 早めの受診を |
呼んでも反応が鈍い、聞こえ方が変わった様子 | 受診時に相談を |
顔の片側だけ表情が違って見える | 早めの受診を |
とくに、ふらつきや首の傾きを伴う場合は、耳のかゆみとは別の見立てが必要になることがあります。バランスに関わる変化については別の記事でも触れていますので、あわせてご覧ください。いずれにしても、判断と治療は動物病院の領域です。
家庭で控えていただきたいこと
良かれと思って行ったことが、かえって愛犬の負担になる場合があります。次の点は控えてください。
控えること | 理由 |
綿棒を耳の奥まで入れる | 汚れを押し込んだり、傷つけたりするおそれがあります |
人間用・他の犬用の薬を使う | 自己判断での使用は控え、動物病院にご相談ください |
以前処方されたものを残りで使う | そのときの状態と今が同じとは限りません |
洗浄液を勢いよく注ぎ入れる | 状態によっては負担になります。使用の可否は動物病院に |
嫌がる愛犬を押さえ込んで処置する | 痛みの記憶が残り、今後のケアが難しくなります |
耳の中をのぞこうと強く引っ張る | 耳の構造には個体差があり、無理な力は避けてください |
掻き傷に家庭にあるものを塗る | 自己判断での使用は控えてください |
もうひとつ。受診の直前に念入りに掃除してしまうのも、できれば避けたいところです。きれいにしてから連れて行きたくなるお気持ちはよく分かりますが、獣医師が見たいのは「普段の状態」です。
受診前にまとめておくメモの型
診察の時間は限られています。その場で思い出そうとすると抜けが出るので、あらかじめ書き出しておくと安心です。
項目 | 書く内容 |
いつから | 「だいたい2週間前から」で構いません |
どちら側 | 右・左・両方・分からない |
頻度の変化 | 「増えている」「夜だけ」など |
におい | 変化があるか、いつ気づいたか |
見た目 | 汚れの色、赤み、傷、腫れ |
触ったときの反応 | 嫌がる程度と、以前との違い |
ふらつき・傾き | あり・なし、気づいた日 |
耳以外の変化 | 食欲、睡眠、歩き方、体の他の部分のかゆみ |
普段のお手入れ | 頻度と使っているもの |
今飲んでいるもの | 処方されているものがあれば |
写真や動画があれば、日付とともに整理しておいてください。症状が出ているときの様子は、診察室では再現されないことも多いものです。
耳の不快感は、暮らし全体に響く
耳の違和感が続くと、眠りが浅くなります。夜中に頭を振って目が覚める、掻いているうちに目が冴える。睡眠が削られれば、日中の活動量も落ちます。
シニア期の犬にとって、睡眠と活動のリズムが崩れることは、それだけで体力や気持ちの張りに影響します。また、耳を気にして頭を傾ける姿勢が続くと、首や肩に無理がかかることもあります。
「たかが耳」ではなく、暮らし全体とつながっているという目で見ていただけたらと思います。そして同じことは、見守る側のご家族にも当てはまります。夜中に何度も起こされる日が続けば、ご家族の疲れも積み重なっていきます。
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ご家庭で受けられるケアという選択肢
合同会社しっぽは、北九州市で老犬・シニア犬・療養中のペットを対象に、訪問型のアニマルケアを行っています。施設は持たず、担当者がご自宅にうかがう形です。
耳を気にするそぶりが増えた、夜に頭を振る音で眠れない、動物病院に連れて行きたいけれど支えきれない——そうしたご相談もお受けしています。
訪問介護・介助:ご自宅での日常のケアのお手伝い
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担当するのは、愛玩軸物救命士・愛玩動物看護師・愛玩動物介護士のいずれかの資格を持つ者です。動物取扱業登録(保管・第16014号)を受けています。医療行為は行いませんので、体の異変についてはかかりつけの動物病院での診察が前提となります。預かり・ペットホテルは行っておりません。
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「病院に行くほどかどうか分からない」という段階のご相談でも構いません。愛犬の様子をお聞きしながら、ご家庭でできることを一緒に考えます。





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